相撲で塩をまく取組前の作法は、どんな意味があるのか。
相撲の醍醐味の一つに、取組前の所作がありますよね。
思いっきり山盛りの塩を、天高く舞い上げる個性的な力士もいます。
この塩をまくことの他にも、
- 四股を踏む
- 力水をつける
- 手刀を切る
- 蹲踞・柏手・塵手水(そんきょ・かしわで・ちりちょうず)
など、相撲の土俵上の所作にはどんな意味があるのか。
一つ一つ見ていくことで、相撲の面白さがまた一つ広がるのでいっしょに見ていきましょう。
相撲で塩をまく意味は何なの?
相撲の取組前の所作の一つで代表的なものが「塩をまく」
どうして取組前に塩をまくの?
不思議に思ったことはありませんか。
相撲観戦してる方は、山盛りの塩を天高く舞い上げる(水戸泉や旭日松のような)力士は見ていて盛り上がるし、そういった個性でファンになるといった人も多いと思います。
そんな塩を土俵上にまく行為は、
こんな意味があったのですね。
だから、ただのパフォーマンスで塩をまいているのではなく、神聖な意味があったのです。
この塩まきは「清めの塩」「力塩」「波の花」とも言われています。
塩をまけるのは十両以上
ただ、この塩をまくことが許されているのは、関取である十両以上からになります。
十両より下の幕下や三段目の力士は塩をまきません。(*日によって土俵上の進行が早いときには、幕下でもまくことがあります。)
だから、初めて十両に上がってきた力士は、この塩まきになれず頭にかぶったりすることもあるようですね。
十両と幕下では塩まき以外にも、とてつもない待遇の差があります。
そんな番付による待遇の違いは、こちらの記事で実感してもらえればと思います。
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また、その塩ですが、使われているのは有名な東京場所では「伯方の塩」、その他の地方では「瀬戸のほんじお」が使われているようです。
そして、1日に使われる塩の量が合計で45kg!
一場所(15日間)にするとなんと約650~700kgも用意されるとの事で、その圧倒的な量にも驚きですね。
相撲の四股は何を意味しているの?
相撲といえば四股(しこ)、四股といえば相撲というくらいですよね。
この四股を踏む事には、どんな意味があるのでしょうか?
四股の踏み方にも力士によって個性が出ますが、四股を踏むことは
このように言われています。
もともとは「醜(しこ)」と書かれていて、今のような「四股(しこ)」は後からついた当て字だと言われています。
地中に潜む害虫など悪いもの、もしくは強者のこと
このことから「醜(しこ)を踏む」というのが、
- 害虫、悪霊など悪いものを踏みつけて、土地を神聖にする。
- 醜(強者)を踏み破る。
このような意味で捉えられていたようです。
四股名の意味
また、四股名というのも以前は「醜名(しこな)=シコを踏む者の名」とされていたようで、かなり深い意味があったのですね。
このような意味以外にも、四股を踏むことは準備運動の意味や体幹を鍛える効果、股関節の柔軟性を養うなどの効果も期待できます。
力士の取組ではバランスがかなり重要なので、四股を踏むことは大切な稽古の一つになっていますね。
相撲で力水をつける理由は?
土俵に上がって取組を行う前に、力水をつける所作があります。
この力水ですが、相撲観戦しているとわかりますが別に飲んでいるわけではありません。
だから「力水を飲む」ではなく、「力水をつける」といった言い方になっていますね。
この力水をつける理由は、神が降りてくる土俵に対し水で穢れを洗い流して身を清める意味が込められています。
力水は口の中に含んで口の中をゆすぎ、その後吐き出しています。
化粧水と化粧紙
この力水は化粧水(けしょうみず)とも言います。
*女性が使う化粧水ではありませんのであしからず。
そして、その力水を吐き出す際に白い紙をもらっていますが、あれを「力紙(ちからがみ)もしくは化粧紙(けしょうがみ)」と呼びます。
どうして「化粧(けしょう)」というのかですが、混同しやすいのが女性の化粧ですよね。
この相撲の世界で使われる化粧という言葉は、「精神的な化粧」を意味していると考えられています。
力水によって自分を洗い磨くことで「本来の自分や資質を出すため。」といった考えがあるようです。
同じように化粧まわしといったものもありますよね。
これはどちらかというと、豪華絢爛に見せるため、華やかに見せるための意味があると考えられています。
相撲の蹲踞・柏手・塵手水とは?
さて、相撲の取組前の土俵上の作法には、塩をまくことや四股を踏むこと以外にも
- 蹲踞(そんきょ)
- 柏手(かしわで)
- 塵手水(ちりちょうず)
このような所作があります。
それぞれどういった意味があるのか、簡単にですが説明しますね。
まずは、こちらの動画で巡業の演目の一つ「相撲講座」の映像で、蹲踞や柏手などの様子が見れます。
蹲踞(そんきょ)は、取組の相手や土俵を敬い、精神統一させる意味があります。
剣道の試合とかでも蹲踞はありますよね。
柏手(かしわで)は、神様への敬意を表す意味があります。
塵手水(ちりちょうず)は両手を広げて上にあげる動作がありますよね。
あの時に上に向けた手のひらを下に返すことを「塵を切る」といいます。
このときの「塵」は塵手水のことで、野外での取り組みの際に水の代わりに草で手を清めたことが由来となっています。
そして、「自分は武器は持っていませんよ。」ということを示す動作でもあります。
相撲で手刀を切るとは?
また、懸賞金を受け取る際の土俵作法として、
このように動かして受け取っているのは、
手刀(てがたな)を切る。
と言います。
懸賞金を受け取る際に手刀を切る理由は、
とされていて、それぞれ
- 左が『神産巣日神(かみむすびのかみ)』
- 右が『高御巣日神(たかみむずびのかみ)』
- 真ん中が『天御中主神(あまのみなかぬしのかみ)』
このようになっています。
手刀はいつから?
この手刀は、昭和41年の七月場所から正式に実施されるようになりました。
もともとはこの手刀の作法はなかったようなのですが、無造作に懸賞金をとる様子を
ということで、大関の名寄岩がこれを始めたのがキッカケだと言われています。
その時の手刀の意味は今の解釈とは違って、
この字を描くということで、手刀の切りかたも
この順番だったと言われています。
あとがき
相撲で塩をまく意味は何なのか。
また、四股を踏むことや力水をつける理由、蹲踞・柏手・塵手水や手刀を切る理由など、土俵上の所作についてまとめましたがいかがでしたか。
土俵上の作法には、一つ一つ大切な意味が込められていたのですね。
相撲は取組の中身や番付などにも注目されますが、こういった取組前の動きにも注目するのもいいかもしれません。
これらの作法の中に個性もたくさん現れるので、いろんな力士の違いを見るとクセがあって面白いですよ。
他にも、相撲にはたくさんの魅力が詰まっています!
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